株式会社ヒーリングソリューションズ

Column / コラム

机の上の手紙とペン、花を通して人との関係を考える様子
配信の回数ではなく、届いたあとに残る関係を考える。

「メルマガをやりたい」と聞くと、配信ツールの比較から始まりがちです。何通まで送れるか、どんなテンプレートがあるか、開封率をどう見られるか。もちろん、どれも必要な機能です。

ただ、小さな店や一人で事業をしている人と話していると、本当に足りないのは配信機能ではないことが多いです。書こうと思っていたのに、今日も書けなかった。何を書けばよいか分からず、前回の案内から何か月も空いてしまった。売り込みに見えるのが怖くて、送信ボタンを押せない。届ける道具より、書き続ける時間と伴走者が足りないのだと思います。

おてがみは、その不足を埋めるための「AI配信担当者」としてつくっています。単に一斉メールを送るための画面ではなく、日々の材料を集め、言葉を下書きし、読者からの反応を受け取り、必要なら次の販売へつなぐ。配信の前後にある仕事を、一つの流れで扱えるようにしたいサービスです。

なぜ「メルマガ」ではなく、「おてがみ」と呼ぶのか

名称だけを柔らかくしたいわけではありません。メルマガという言葉には、たくさんの人へ同じ情報を効率よく送るイメージがあります。それが向く場面もあります。一方で、小さな事業が本当に持ちたいのは、何千人もの宛先に一度に知らせる力だけではないはずです。

顔を思い出せるお客様に、季節の変化や店で起きたこと、今なら役に立ちそうなことを知らせる。購入の直後だけでなく、忘れた頃に丁寧に声をかける。返信をくれた人が何を気にしていたのかを次の言葉に反映する。その積み重ねは、広告の配信というより、手紙に近い感覚があります。

だからおてがみでは、送信数や自動化の量を先に追わないようにしています。読者との関係を急に濃くしようとせず、続けられる頻度で、事業者本人の言葉を届けることを中心に置きたい。AIが入るからこそ、人らしい間合いを残す必要があると考えています。

配信できない理由は、文章力より「材料が残っていない」ことにある

いざ書こうとすると、内容が思い浮かばない。これは文章が苦手だからというより、日々の出来事が「あとで書く材料」として残っていないことが原因になる場合があります。お客様との短い会話、業界の小さなニュース、商品を使っていて気づいたこと、SNSで流れてきた質問。書く種はあるのに、忙しい一日のなかで消えていきます。

おてがみでは、業界のニュースや発信者のSNSなどから、日々の材料をネタ帳に集められるようにしています。ここで目指しているのは、自動で「正しい記事」を量産することではありません。あとで自分が見返したときに、「これは今のお客様に話したい」と思えるきっかけを残すことです。

材料がある状態であれば、AIは下書きの力になれます。保存した材料やページのURLをもとに、告知だけでなく、目的に合わせた4〜6通程度のステップメールの案をつくる。自分で書いた文章についても、言い切りが強すぎないか、誤解を招く表現がないかを確認し、別の言い方を提案する。白紙から始める負担を小さくしながら、最終的な言葉は本人が選ぶ。その順番を大切にしています。

「書く」だけでなく、届いたあとの反応まで見る

配信は送った瞬間で終わる仕事ではありません。読者が開いたのか、どんな内容に反応したのか、返信には何が書かれていたのか。そこまで見ないまま次のメールを送ると、こちらが伝えたいことだけが積み重なってしまいます。

おてがみでは、返信への反応も担当者の仕事として扱いたいと考えています。AIが最初の返事を考えることはできますが、送るかどうかは人が決める。特に、悩みや事情が含まれた返信では、早く返すことより、誰がどんな言葉で返すかの方が重要です。

ここにはプライバシーの問題もあります。読者の反応は、配信を最適化するための数字だけではありません。小さな店を選んでくれた理由や、生活の中の困りごとが含まれることがあります。必要以上に分析対象にしないこと、見られる人を限定すること、目的を超えて使わないこと。便利な顧客管理ほど、最初に守る線を決めておかなければなりません。

無料で始め、関係に応じて仕事を増やす

おてがみは、Googleアカウントで始められる無料プランを用意しています。配信を続けられるかどうかは、契約前に機能を比較しただけでは分かりません。まず、自分の言葉で一通を書き、読者に届き、次の一通を考えられるか。その小さな往復を試してもらうことが先だと思っています。

2026年7月時点では、有料プランは月額4,980円からで、Lite・Plus・Standardの段階を用意しています。送信数だけでなく、AI担当者にどこまで仕事を任せるかに応じて選べる形です。初期費用はかけず、必要になってから活動範囲を広げられるようにしています。

読者との関係が育ったあとには、Stripeを使った月額の有料配信にも対応しています。すべてを広告に頼るのではなく、もっと深く受け取りたい人に継続して届ける選択肢を持てるようにするためです。販売額の10%を手数料とする設計にしているのも、最初に大きな固定費を背負わせず、読者に価値が届いた分だけ一緒に成長する形にしたいからです。

すでに別のフォームや配信サービスを使っている人のために、読者リストはCSVで取り込み、配信停止の情報を引き継げるようにもしています。移行のために、これまでの関係を壊さないこと。便利さより先に、読者が望まない連絡を再開してしまわないことを守りたいです。

AIが文章をつくっても、その人の手紙にはならない

AIは、情報を整え、構成を考え、言い換えを出すのが得意です。書けない日に下書きを用意してくれることは、本当に助かります。でも、AIが整えた文章をそのまま送るだけでは、読者にとってその人から届く手紙にはなりません。

その人にしか書けないのは、何を今は書かないか、どんな経験をどの程度まで話すか、相手の顔を想像してどこで言葉を止めるかです。おてがみが増やしたいのは、もっともらしい文章の本数ではなく、事業者が自分の言葉を選ぶ余裕です。

だから、AIには「代筆者」ではなく、材料を整え、書き始めを支え、確認の視点を渡す担当でいてほしい。人が最後に手を入れることを面倒として削らない。この距離感が、サービスの信頼を決めると考えています。

まだ解いていない課題

「お手紙」と言いながら、受け取る人にとって負担のある配信になってしまえば意味がありません。配信頻度の目安をどう見せるか。返信をくれない人も含めて、どこまでを関心として受け取るか。有料の案内を、関係を壊さずにどう伝えるか。数字では単純に決められないことが残っています。

また、事業者ごとの口調をどう育てるかも課題です。最初はAIが整った一般的な言葉を出しがちです。それを、その店らしい温度へ変えていくためには、過去の文章をただ学習するだけでなく、「これは自分らしい」「これは違う」という人の判断を何度も受け取る必要があります。

おてがみは、配信を簡単にするためだけのサービスではありません。書く時間がないから関係が途切れる、という状態を少しでも減らすための仕組みです。送ることを目的にせず、届いたあとにまた言葉を交わせるようにする。そのための担当者を、これからも育てていきます。

一通目よりも、二通目を書けることを大切にする

新しい配信サービスを使い始めたときは、最初の一通を送るところまでは進めることがあります。けれど本当に難しいのは、その次です。前回の内容を繰り返したくない。売り込みばかりにもしたくない。忙しい週が続くと、書くために集めていた材料もどこかへ消えてしまう。そこで止まると、配信しなかったことへの気まずさが残り、次の一通はいっそう遠くなります。

おてがみが支えたいのは、華やかな初回配信ではなく、二通目、三通目へ進める状態です。ネタ帳に残った小さな出来事から選ぶ。前に送った内容を見て、同じ話を避ける。下書きをたたき台にして、自分の今の言葉へ直す。送ったあとに反応を見て、次に書く種をまた残す。この循環ができれば、毎週必ず立派な文章を書かなくても、関係はゆっくり続いていきます。

そのために、配信の予定を厳しいノルマにしないことも大切です。「毎週送るべき」というルールが、内容の薄いメールを増やしてしまうことがあります。季節の変わり目、予約状況の変化、新しい仕事を始めたとき、読者から同じ質問を受けたとき。事業の中に実際の変化があった日に書けるよう、材料と下書きを準備しておく。おてがみは、空白を埋めるための自動送信ではなく、書くべきときに書ける準備を整えるものでありたいです。

「誰に送らないか」も、関係を守る設計になる

読者リストが増えると、全員に同じ案内を送った方が効率よく見えます。しかし、興味のない案内が何度も届けば、読む人にとっては関係が薄くなるきっかけにもなります。配信停止を確実に反映することは当然として、登録の経路や受け取りたい内容を尊重し、必要なら送らない選択をできるようにしたいと考えています。

ここでも、AIは判断を補助できます。過去の反応から次の内容の候補を出すことはできる。でも、相手に送ることが適切か、どの言葉なら失礼にならないかを最終的に決めるのは事業者です。少人数の事業ほど、一度傷ついた信頼を取り戻すのは簡単ではありません。だから販売の機会を増やすことだけではなく、読者が「これは自分に向けて届いた」と感じられる距離を守ることを、機能の外側にある基準として持ち続けます。

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