株式会社ヒーリングソリューションズ

Column / コラム

深い藍色の机の上に置かれた、一枚のオラクルカードと手
1MyMeで、一枚のカードを引く前の静かな時間をイメージしたビジュアル。

これは、株式会社ヒーリングソリューションズ代表・水野博文の個人的な制作記録です。記載している仕様・提供状況は2026年7月時点のものです。

いま、1MyMe(いちまいめ)というカード制作・公開サービスを育てている。

つくる人が自分の言葉や画像からデッキをつくり、誰かが自分のために一枚を引く。オラクルカードでも、タロットメッセージでも、おみくじのようなものでもいい。大事なのはカードの形式そのものではなく、ある人が大切にしてきた言葉が、必要なタイミングで、誰か一人の手元に届くことだと思っている。

サービス名の「1MyMe」は、「一枚目」と「My Me」を重ねた言葉だ。一枚のカードから始まる体験であり、その一枚を引いた人が自分自身に戻っていくための場所でもある。まだつくっている途中だが、なぜこの形にしたのか、いま何を実装し、どこで迷っているのかを残しておきたい。

投稿では流れてしまう言葉を、選ばれる体験に変えたかった

誰かに届けたい言葉があるとき、まず思いつくのはSNSへの投稿だと思う。短く書けるし、すぐに出せる。反応も返ってくる。ただ、SNSの投稿は、読む人のタイムラインを流れていく。言葉の価値が低いわけではないけれど、受け取る側が「いま、この言葉を受け取りたい」と選ぶ余白はつくりにくい。

メールはもう少し深く届く。でも、受け取る側にとっては基本的に一方向だ。本は時間をかけて読み進めるものになる。どちらも大切な形式だが、その間に、もっと小さくて、参加する感覚のある届け方があってもいいと思った。

カードを引く前には、ほんの少し立ち止まる時間が生まれる。今日は何を考えたいのか。いま、どんな迷いの前にいるのか。一枚を選ぶという小さな動作があるから、短い言葉にも読む順番ができる。同じ文章でも、偶然目に入ったときと、自分で引いた一枚として出会ったときでは、意味が変わる。

もちろん、カードが未来を決めるとは思っていない。誰かの人生に正解を渡す道具にもしたくない。むしろ、「自分は本当はどう思っているだろう」と考えるための小さな鏡のようなものにしたい。引いた言葉を正解として受け取るのではなく、その言葉に対して自分が何を感じたのかを持ち帰ってもらう。その余白を残すことが、1MyMeの前提にある。

いま、できるようにしていること

1MyMeでは、つくる人が自分のデッキをつくり、公開して共有できる。2026年7月時点のFreeプランでは、月額0円・クレジットカード登録なしで、3デッキ、各78枚まで作成できるようにしている。最初から販売のための大きな仕組みを求めるのではなく、まずは言葉や作品を一組のデッキとして形にし、誰かに引いてもらうところまで始められる状態を大切にした。

画像が描けなくても、言葉だけのデッキから始められる。手元の写真やイラストを使ってもいい。カードごとに言葉と画像を置き、必要に応じてレアリティや抽選確率を整える。1枚引き、複数枚を選ぶ形式、タロット風、おみくじ風など、引かせ方もデッキの目的に合わせて選べる。明るい庭、妖精の森、聖なる夜のように、カードが現れる空間の印象も整えられるようにしている。

ここで気をつけているのは、機能を増やすことが作品の自由度と同じではない、ということだ。設定項目が多すぎると、つくる人は最初の一枚にたどり着けない。だから「何でもできる管理画面」ではなく、実際のカードを大きく見ながら、必要なところから決めていける制作アトリエのような場所を目指している。

引く人にアカウントを強制しないことも、最初に決めた。イベントやSNSから気軽に試してもらいたいデッキなら、「誰でも何度でも」引けるようにする。毎日の習慣にしたいなら、一日に引ける回数を決める。言葉を受け取った人と継続して関係をつくりたい場合だけ、本人の同意を得た登録を入口にする。購入者だけに届けるデッキという形も考えている。

登録しなければカードを引けないサービスではなく、まず体験があり、必要になったら関係が始まる。この順番にしたい。つくる人の文章や画像の権利も、サービス側が囲い込むのではなく、つくった人に帰属する前提で考えている。

最初のデッキは、少なくていい

Freeプランでは一つのデッキに78枚まで置けるようにしている。でも、最初から78枚つくる必要はない。むしろ、最初は3枚でも5枚でもいいと思う。「いまの気持ちを確かめる」「少し視点を変える」「次にできる小さなこと」のように、引いた人に渡したい時間を三つに分ける。そこに自分の言葉を置いてみる。その小さな一組が、デッキの芯になる。

つくる前に決めるべきことは、カードの絵柄より先にある。誰に引いてほしいのか。どんな場面で引いてほしいのか。引いたあと、何を持ち帰ってほしいのか。毎日引けるほうがよいのか、一度だけ丁寧に引いてもらうほうがよいのか。ここが曖昧なまま枚数だけを増やすと、カードは並んでいても体験が育たない。

公開後も、完成とは限らない。実際に一枚を引いてもらい、「言葉が少し強すぎた」「画像の雰囲気と合わなかった」「毎日引くには枚数が足りなかった」と気づく。その感想を受けて、言葉を直し、カードを足し、引かせ方を変える。僕はこの往復こそが、カードをつくる面白さだと思っている。1MyMeは、一度アップロードしたら終わりの展示棚ではなく、つくる人が言葉を育て直せる作業台でありたい。

カードはゴールではなく、関係の入口になる

一枚引いてもらって終わり、では少しもったいない。その一枚をきっかけに、「この人はどういう言葉を大切にしているのだろう」と知ってもらう。次のデッキを引いてもらう。作品やイベントに来てもらう。必要なタイミングで、あらためて言葉を届ける。1MyMeでつくりたいのは、強い集客導線というより、無理のない関係が少しずつ育つ入口だ。

たとえば、カウンセラーやセラピストが対話の前に一枚を引いてもらう。講師が受講生に、その日の振り返りのためのカードを渡す。作家やイラストレーターが、自分の世界観に触れてもらう小さな作品として公開する。お店が来店後にまた訪れてもらうための、一日の言葉を用意する。どれもまだ仮説だが、カードは占いのためだけのものではないと思っている。

ただし、関係をつくることと、個人情報を集めることは同じではない。引いた人の気持ちや行動を過度に追いかけるような設計にはしたくない。誰に、何回、どの情報を残してもらうのかを、つくる人も引く人も理解できる形にする必要がある。小さなサービスほど、この境界を曖昧にしないことが信用になると思う。

AIは、言葉を量産するためではなく、向き合う時間を増やすために使う

カードを何十枚もつくるとき、最初にぶつかるのは言葉の量だ。タイトル、本文、補足、画像の説明。世界観を保ちながら枚数を増やすのは、思った以上に手間がかかる。そこで、使っているAIエージェントとつなぎ、カードをまとめて書き込めるような仕組みも試している。

でも、AIがカードを全部つくってくれればよい、とは思っていない。誰にでも当てはまるきれいな言葉だけが並ぶと、その人のデッキである意味が薄くなる。AIには、素材の整理、下書き、構成の確認、言葉の重複を見つけるといった役割を担ってもらう。最後に残す言葉と、その言葉が置かれる順番は、つくる人自身が決める。

僕がAIに期待しているのは、表現を代行することよりも、表現を続けられる状態をつくることだ。途中で言葉が尽きても、もう一度考える場所に戻れる。画像をどうするか迷っても、選択肢を整理できる。そういう補助があれば、専門的な制作経験がない人でも、自分の世界観を少しずつ育てられる。

いま、まだ解けていない課題

一番の課題は、「カードをつくりたい」と思っていない人にも、最初の一枚へたどり着いてもらえるかだ。オラクルカードやタロットに慣れている人なら、カードの枚数や世界観を想像しやすい。一方で、自分の言葉を誰かに届けたい人が、最初からカードという形式を選ぶとは限らない。

だから、サービスの説明だけでは足りない。どんな人が、どんな場面で、何枚くらいから始められるのか。画像がなくてもよいこと。公開したあと、引く人は登録しなくてもよいこと。自分のサイトやSNSから一枚を引いてもらうだけでも成立すること。そうした具体的な最初の一歩を、もっとわかりやすくしなければならない。

販売機能も、急いで足せばよいわけではない。StandardとProでは販売を扱えるようにする予定だが、作品を売る人、購入する人、サービスを運営する側のどれにとっても納得できる仕組みを先に考える必要がある。手数料、購入後に引ける範囲、デジタル作品としての扱い、問い合わせへの対応。カードが売れることより、つくった人と受け取った人の間に不信感を残さないことのほうが大切だ。

一枚の言葉から、もう少しやさしい関係をつくれるか

1MyMeは、占いをオンラインに置き換えるだけのサービスにはしたくない。自分の言葉を作品として整え、誰かが自分のためにそれを選ぶ。そこから、相手を急かさず、でも途切れない関係が育っていく。そのための小さな器をつくっている。

いまは、機能を増やす前に、つくる人が最初の一枚を置きやすいか、引く人が自分の気持ちを置いて帰れるかを見続けたい。カードを引いたあとに残るのは、サービスを使ったという記憶ではなく、「自分はこう思っていたのかもしれない」という小さな発見であってほしい。

その一枚をつくる人が増え、言葉を必要としている人へ届く。1MyMeは、そこから育てていきたい。1MyMeを見る