これは、株式会社ヒーリングソリューションズ代表・水野博文の個人的な制作記録です。
新しいサービスを考えるとき、「市場はあるのか」「競合は何社いるのか」「どれくらいの規模になるのか」といった話から始めることがある。
もちろん、それは大切だと思う。つくったものが、誰の役にも立たなければ続かない。小さな会社ほど、つくるための時間もお金も限られている。
でも、僕たちがつくってきたものの多くは、もう少し手前から始まっている。
たとえば、お客様が毎回同じところで止まる。スタッフの説明が、何度も同じになる。いい写真を撮ったのに、渡すところまで気持ちよく終われない。サイトを更新したいのに、更新する人がいない。
まだ「課題」として名前がついていない、小さな困りごとだ。
困りごとは、最初から大きくない
現場の困りごとは、だいたい地味だ。「ここ、毎回手でやっているんですよね」「これは誰に聞けばいいんだろう」「できるはずなんだけど、触るのが怖くて」。
ひとつだけなら、我慢できる。けれど、毎日少しずつ積み重なると、人の時間と気力を削っていく。誰かが気を利かせて埋めているうちは、表面化しないことも多い。その人が忙しくなったり、休んだりして初めて、「ここは仕組みになっていなかった」とわかる。
そういうところに、仕組みを入れる余地がある。大きな革命より先に、目の前の一手間を減らす。そのほうが、本当に使われるものになることが多い。
話を聞いているだけでは、形にならない
ただ、困りごとを聞いただけで、すぐにプロダクトができるわけではない。最初は個別の事情に見える。あるお店だけのこと、ある担当者だけのこと、ある一日の流れだけのことに見える。
それでも、別の現場で似た話を聞く。自分たちでも同じことに時間を使っている。少しずつ共通点が見えてくる。そのとき初めて、「これは誰か一人の困りごとではなく、仕組みでほどけるものかもしれない」と思える。
だから、最初から大きな構想を描くより、何度も同じ違和感に出会うことを大切にしたい。繰り返し現れる小さな詰まりには、だいたい理由がある。
自分たちで使わないものは、つくりにくい
僕たちは、できるだけ自分たちでも使う。使ってみると、デモ画面では見えなかったことが出てくる。
入力が一つ多いだけで、急に面倒になる。通知が多すぎると、誰も見なくなる。便利な機能でも、説明に10分かかるなら、現場では使われない。逆に、ほんの小さな変更で「これなら続く」と感じることもある。
作り手が日常で使うことは、万能の答えではない。でも、少なくとも「人に渡す前に、自分たちが困るところ」を知ることはできる。その感覚を確かめながら、少しずつ形にしていく。
答えではなく、仮説として出す
最初から完璧なプロダクトをつくることは、たぶんできない。だから、「これが答えです」と言い切るより、「今はこういう形がいいと思っています」と出してみる。
使ってもらい、話を聞き、違ったら直す。その繰り返しの中で、ようやく名前がついてくる。名前がついたあとも、現場が変われば、また変えていい。
まだ名前のない困りごとは、地図には載っていない。でも、現場には確かにある。僕たちはこれからも、そこを見逃さずに、つくっていきたい。